映画「ファースト・マン」

1969年7月10日人類が初めて月面に降り立ったアポロ11号船長のニール・アームストロング船長。彼の半生を描いたのが「ファースト・マン」です。もともとはアメリカ空軍のテストパイロットだったニールは縁あってアポロ11号の船長に任命されました。

彼が月面を目指す3人の宇宙飛行の記者会見で、「月に何か持って行きたいものはありますか」と質問が出ると隣に座っていたバズ・オルドリンは「妻にプレゼントする宝石を持っていきたい」と答えたのに対し、ニールは「少しでも多くの燃料を持っていきたい」と答えました。彼の冷静沈着で真面目な性格が表れています。

ニールの印象的なコメントがありました。

「X-15機に乗り間近に見たんです。大気圏を。”とても薄く地球のわずかな一部”でしかなく、ろくに見えない。地上から見上げると実に広大なのに、普段は気にもしない。別の地点に立つと見方が変わるんです。」

“I had a few opportunities in the X-15 to observe the atmosphere. It was so thin, such a small part of the Earth. You could barely see it at all. And when you’re down here in the crowd and you look up. It looks pretty big and you don’t think about it too much, but when you get a diffent vantage point, it changes your perspective. ”

宇宙でのドッキング技術検証のため、ジエミニ8号が無人宇宙船アジェナとランデブーする時は優雅な瞬間でした。しかし、ドッキング後に原因不明の回転が始まり制御不能になります。ニールはとっさの判断でRCS(制御姿勢システム:Reaction Control System)を使用して回復しました。宇宙船が毎秒一回転という過酷な状況からの回復は手に汗握る時間でした。ここでは宇宙船の異常回転という失敗をしてしまいましたが、後日その問題について追及されるとニールは言いました。

「今、失敗すべきだ。月で失敗しないために。」

“We need to fail. We need to fail down here, so we don’t fail up there.”

1969年7月20日、全てが整い月面着陸に向けてアポロ11号が打ち上げられました。ロケットで打ち上げ時の激しい振動の後、エンジンが止まり第2弾ロケットを切り離すと静寂が訪れ無重力の世界になりました。窓の外に目を写すと、地球の上に漆黒の宇宙が広がっていました。

地球の周回軌道を離れ司令船・月着陸船は月を目指して地球を離れます。4日後にアポロ11号は月周回軌道に到達しました。太陽に照らされている時と月の裏側に入る時の光と闇のコントラストはとても印象的でした。

その後、指令船を離れた月着陸船が月面の「静の海」に着陸するまでのシーンでは予定していた場所が岩だらけだったので急遽着陸地点を変更する必要がありました。燃料残量低下のアラームを鳴らしながらのニールの操縦には感服しました。

着陸後、月面に降り立ったニールは歴史上有名な言葉を発しました。

「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」

“That’s one small step for man, one giant leap for mankind.”

この作品でもう一人重要なのが妻ジャネットの存在です。当時はソ連との宇宙開発競争が激しく、安全対策は現在ほど重要視されていなかったので、多くの宇宙飛行士が試験機の墜落や事故で亡くなっていきました。そんな精神的ストレスを抱えながらジャネットは夫のニールを支えました。月に飛び立つ前日、彼女はニールに子供たちに自分の言葉で話して欲しいと次のような言葉で懇願しました。妻の強い決意を感じる言葉でした。

「二人の子供たちを座らせて帰れないときの心構えをさせて。」

“You’re gonna sit’em down. Both of them. And You’re gonna prepare them for the fact that you might not ever come home.”

技術的・財政的な困難に直面しながらも人類初の月面着陸を成功させたアポロ11号というとその華々しい業績が目立ちます。「ファースト・マン」ではこの成功の裏にある人間的な苦悩が盛り込まれているのが特徴ではないでしょうか。全体的には少し暗い印象がありますが、その分人間らしさも感じる心に染みる映画でした。

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